不幸だっちゃ

だから

だから

普通にクラスメイトとだべって駄弁って。

大竹と馬鹿やって。

葵が一緒にいてくれれば。

それだけでいい。

それが一番の望みだ。

……だがあの力が発現されたら……

葵を殺し、大竹を殺し、街の人を殺し、殺人鬼として生き延びる位なら……ここで死んだ方が数倍ましだ。

「……なら、そろそろ茶番を終わらせますか」

虚ろな蒼い瞳を向けながら、葵は歩みだす。

夕日によってできた長い影が緋影のもとに向かう。

じゃり、じゃり、じゃり、じゃり。

すぐに葵は目の前にまで歩み寄ってきた。

葵は何も言わない。

ただただ、無表情に、虚無の瞳で見つめるだけだ。

「……忘れていました。何か言い残す事はありませんか」

無機質な、簡素な声で呟く。

対し、緋影は怪訝な表情で答えた。

「遺言じゃないけど、いいかい?」

「どうぞ、手短に」

葵の瞳をじっと見つめる。

「……どうして先輩はそんなに辛そうなんだ?」

「!」

葵は緋影の言葉に完全に意表を突かれたようだ。顔に一瞬だけ驚きが出る。

しかし、緋影にとっては意外なことでも何でもない。

眼鏡越しに、彼女の『心の色』が見えてしまっているのだから。