不幸だっちゃ

誓い

誓い

「……深山君」

「……それとも、俺じゃ嫌かい?」

少し表情を暗くして緋影は呟く。

葵は緋影の胸に顔を埋めて、

「……そんな訳、ないじゃないですか……」

ぼそりと呟いた。

「でもいいんですか、深山君。そんな事言ってしまって」

しばらくたって、葵は緋影の顔を見てくすりと笑った。

すぐに緋影の思考は現実に引き戻される。

「ごめん。俺、考え無しだな……自分が置かれている状況もわかっていないんだから」

体には依然として『心眼』が巣食っている。

『心の歪み』を破壊したがるこの悪魔が、巣食っている。

今しばらくは大丈夫だろうが、父の計算をもとにすれば封印が持つのはあと一年足らず……いや、自分の『心眼』はかなり強いそうだから、一ヶ月先の命だって保証は出来ない。

「そんな事を言っているんじゃありません」

葵は強い口調で告げる。

「深山君は死なせません。私を幸せにしてくれるのなら、『心眼』なんかに負けないで下さい」

自分だって負けたくはない。ずっと、ずっとこの生きている喜びを噛み締めていたい。

でも、

「先輩……俺は……もう、大切な人を失いたくはない……もちろん、俺は諦めない。精一杯もがいて、先輩と一緒に幸せな生活を送ってみせる。親父が探している『心眼』を封じる方法も期待は持てるし……でも、万一、小川のように自分の意思にこの体が従わなくなったら……その時は……」

「…………」

しばらく無言で交差する黒と蒼の瞳。

「……わかりました……それが、私が果たすべき、せめてもの義務でしょう。深山君に人は、誰一人として殺させません」