選択
やはりというか、信じられないというか、三階から飛び下りたにも関わらず自分の足はイカレてはいない。
緋影は大竹を抱えながら正門まで疾走していた。
「いるんだろっ!白マントッ!出て来いっ!」
叫びと同時に、砂塵が巻き起こる。
風が止んだ時には、白マントは砂塵が起こっていた中心に立っていた。
音もなくゆっくりと歩み寄って来る。
「……お前から私を呼ぶとはな……言っておくが、手は貸さんぞ」
「そんな事を頼みはしない。頼むのは……」
緋影は言葉を切って、
「こいつを安全なところに避難させてくれ」
肩に担いだ大竹に視線を走らせた。
「……自分の命よりも、他者の命を重んじる、か……」
性別不明な不可思議な声で語りかけながら、白マントは大竹を緋影から受け取った。
「一つ、助言をしておく。周囲に展開された結界は特殊なものだ。一般人には近くに立ち寄れないように出来ている。まあ、この青年は例外のようだが。ただ、『心眼』を持つお前には絶大な威力を発揮する代物だ。これを破壊して逃げようと考えているならやめておけ」
白マントは緋影に背を向け、
「深山緋影……生き延びたいのなら、戦え。修羅の道を歩みたくなければ……この場で肉体の死、あるのみだ……生きたければ眼鏡は外したままでいろ」
白マントは肩に担いだ大竹と共に、夕日に溶け込むように消えていく。
〔……死にたくなければ、奴を殺せ……〕
どこからか声が聞こえてくる。
否。緋影の心に沸き起こるもう一つの声。